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柚木麻子『マジカルグランマ』あらすじ・感想(ネタバレ含む)

柚木麻子さんの新刊『マジカルグランマ』を読んだので。

  

◆柚木麻子さんの作品は何を読んでも面白い

柚木麻子さんは1981年生まれの小説家。

大好きな作家のひとり。

 

過去に『ランチのアッコちゃん』

『伊藤くんA to E』がドラマ化されているので

ご存知の方も多いのではないだろうか。

 

女同士の関係(友情、憧れ、嫉妬)の描き方が秀逸。

女が隠しておきたい見られたくないような感情を

容赦なくさらけださせていくのが痛快。

(これまで人をものすごく観察されてきたんだろうなと思う。)

そしてなんやかんやあっても

ラストは気持ちが照らされる作品が多いのも好きなところ。

 

ちなみに私のおすすめ作品はこちら。

『けむたい後輩』

承認欲求と自意識とプライドの塊の痛い女と、なぜか彼女に憧れている後輩の話。

けむたい後輩 (幻冬舎文庫)

けむたい後輩 (幻冬舎文庫)

 

 

『BUTTER』 

きっとバター醤油ご飯を食べたくなる。

BUTTER

BUTTER

 

 

 

◆『マジカルグランマ』のあらすじ

 

マジカルグランマ

マジカルグランマ

 

 

元女優の正子は現在74歳、主婦だ。

女優といっても代表作はなく、脇役のまま女優としての活動を終えていた。

正子は映画監督の男性と結婚し、結婚を機に50年近く前に引退した。

現在、夫は同じ敷地に住んではいるものの、4年間口をきいていない。

ゴシック様式の広い洋館に正子が、離れには夫が暮らしていた。

夫婦関係は崩壊しているものの、夫は離婚に応じずにいた。

 

正子は自活できる収入を手に入れ屋敷を出て行き、

別居から離婚へ持ち込むのを目標としている。

そこで74歳で再就職活動を始める。

正子はシニア俳優の派遣事務所に登録をするが、

なかなかオーデイションに受からずにいた。

 

そんな時に正子は、古い付き合いのある先輩女優から

外見を少し変えるようにアドバイスを受ける。

戸惑いつつも先輩女優の言うとおりにしたところ、

正子は70代半ばにして大ブレイクをすることになる。

 

正子は

「可愛いおばあちゃん」

「理想のおばあちゃん」

として世間から大いに慕われ人気を集めた。

 

・・・

 

しかし、そんな状況も夫の死によって一変する。

同じ敷地内で、いつのまにか夫は亡くなっていた。

報道陣が押し寄せ正子はコメントを求められるも、

そのときの正子の振る舞いは世間の求めていた

「可愛いおばあちゃん」

ではなかったのだ。

 

夫の死を正子は悲しまなかった。

夫婦関係は冷え切っていたことも世間に知れ渡り、

それまでイメージが崩れ去り、彼女は人気者から一気に転落した。

 

事務所を解雇され、仕事を失った正子に更に悲報が舞い込む。

夫には多額の借金があったことが発覚。

屋敷を売りお金にするつもりでいたものの、解体費用も1000万かかるという。

 

更に夫のファンだったという映画監督志望の若い女の子・杏奈が

家に転がり込んできていて、渋々共同生活を始めることになる。

正子にはお金が必要だ。

杏奈から食事代・宿代を取り

メルカリで屋敷にあるものを次々と売り始めるー 

 

◆75歳のおばあちゃんが主人公ー2019年で75歳を迎える著名人を調べてみた

この『マジカルグランマ』74歳の正子は微妙に75歳とサバを読み

一時はオーディションで成功を掴むことになる。

(その成功も、夫の死によってイメージダウンし転落するけれど)

 

私が初めに読んだときに

75歳という年齢をいまいちイメージできなかった。

年齢を聞けば十分高齢な印象はあるけれど、実際はどうなのだろう。

参考までに2019年に75歳を迎える芸能人・著名人を調べてみた。

 

みのもんた(1944年8月22日)タレント

草野仁(1944年2月24日)アナウンサー

高橋英樹(1944年2月10日)俳優

杉良太郎(1944年8月14日)俳優

黒沢年雄(1944年2月4日)俳優

ジェフ・ベック(1944年6月24日)ギタリスト

田中眞紀子(1944年1月14日)政治家

(女性であまり知っている人がいなかったので政治家だけど田中眞紀子さん。)

 

こうしてみると75歳とはなかなかパワフル。

芸能人だから実際の75歳とはまた違う部分もあるだろうけれど

正子も女優なわけだから、こんな年代なのねと思っていいだろう。

 

 

◆マジカルグランマというタイトルーマジカルニグロから

マジカルグランマ、というタイトルはかわいい響きだ。

しかし、このマジカルグランマ、実はマジカル・ニグロからきている。

マジカル・ニグロ(Magical Negro)は特にアメリカ映画において白人主人公を助けに現れるストックキャラクター的な黒人のことである[1]。しばしばすぐれた洞察力や不思議な力を持った存在として描かれるマジカル・ニグロはアメリカにおいて長い伝統を持つキャラクター類型である。

マジカル・ニグロ - Wikipediaより引用)

ステレオタイプとして描かれる白人を助ける黒人。

都合の良い、便利な、魔法使いのような。

 

 

正子がオーディションで好きな映画は『風とともに去りぬ』と答えた時、

面接官の一人が、マジカルニグロという言葉を口にした。

このとき、正子は初めてマジカル・ニグロという言葉を知る。

そして自分はかつてマジカルグランマを演じていたのかと気が付く。

つまりそれは

可愛くて、優しくて、愛される、穏やかな

都合の良いステレオタイプのおばあちゃんだった。

 

正子はこのことに気が付いた時に

家族とうまく関係を築けていない人

孫にお小遣いをあげたり、

身なりを整えるような金銭的な余裕のない人

そんな現実のお年寄りを傷つけていたのかもしれない、と考えることになる。

 

◆『マジカルグランマ』感想・ネタバレ含

ついこのあいだまで放送されていた朝ドラ『まんぷく』では

ヒロイン福子のお母さんである今井鈴(松坂慶子)が

それまでの朝ドラヒロインのお母さん像とまるで違い話題・人気となっていた。

思ったことをぽんぽん口に出し、わがままだったり、自分本位だったり、

しかし憎めない、お茶目なお母さんだったことを思い出した。

 

さて、従来の物語におけるおばあちゃんを思い浮かべると

どんな人物を思い浮かべるだろう。

 

75歳の女性が主人公になる物語というのは決して多くはない。

まず60歳を過ぎた主人公はなかなかお見掛けしない。

さらにそれが女性ともなるとまるで思い出せない。

 

高齢になった女性は脇役にまわり

誰かを支え優しく見守る役割を

私たちは無意識のうちに押し付けていたのかもしれない。

 

そんな枠から飛び出していくのが主人公・正子である。

夫の死や人気者からの転落、人との出会いをきっかけに

彼女は自分の人生を自分の思うように生き始める。

 

メルカリを覚え、思い出よりもお金だと言いのける様は潔く気持ちが良い。

 

過去より未来の方が圧倒的に大事で、それはその人に未来がどのくらい残されているかには、関係しない。(p.100)

 

お年寄りは常に昔に思いを馳せて、未来より過去を大切にしているもの。

そんな風に私はどこか思い込んでいたので、はっと目を覚ました気分だ。

 

正子は75歳にして、未来を想像し、新しいことにチャレンジしていく。

時には図々しく、わがままで、計算高くて、でも悔しくも魅力的だ。

何が起きるか分からない人生を面白がって生きている。

 

・・・

 

ストーリーもくるくると展開していき

予想もつかない事態の連続で夢中で読んでしまった。

予想は裏切られるばかりで、新しくて弾けた物語。

 

逞しくキュートなこのおばあちゃんから目が離せない。

 

 

マジカルグランマ

マジカルグランマ

 

 

 

町屋良平「しずけさ」あらすじ・感想『文學界5月号』より

◆町屋良平さんは赤い服(ジャージ?)が印象的だった芥川賞

第160回の芥川賞を受賞された町屋良平さん。

1983年生まれ、東京出身の小説家です。

 

私にとって

受賞発表の時に着ていた赤い服の印象が強くて。

なんかアウトローな、いかつい人なのだろうか…ボクシングだし…

と勝手にイメージしていました。

(超ステレオタイプで申し訳ない)

 

ただ、TV出演をされているのを拝見したとき、

お話の仕方や表現がきれいでやわらかくて。

一体どんな人なのだろう、

どんなものを書いてきた人なのだろう、

と気になり作品も読んでみなければと思っていたところでした。

 

そんな折に今月号の文學界で新作「しずけさ」が発表されていました。

 

こんなことはほとんどないのだけれど

あらゆる世代のあらゆる人に薦めたいと思えるものだったので

簡単にあらすじと感想を書いていきたいと思います。

文學界2019年5月号

文學界2019年5月号

 

 

 

◆町屋良平「しずけさ」あらすじ

棟方くんは仕事を辞めた。

原因は不眠とゆううつ。

鬱と判断されるかは微妙なところ、だった。

今は実家で、ゲームをしたり散歩をしたりしながら時間を過ごしている。

夜に起きて朝昼に眠る生活だ。

 

そんな棟方くんが小学生の男の子、いつきくんと出会う。

2人が出会ったのは真夜中の公園だった。

 

・・・

 

いつきくんは小学生なのに真夜中に一人で外を出歩いているー

いつきくんの両親はいつきくんにごはんもおやつも与えるし

いつきくんを殴ることも、罵ることもない。

 ただ、

午前2時から午前6時までは家にいてはいけない、

と言いつけられている。

 

だからいつきくんは午後8時に寝て、午前2時に起きる。

そして朝まで一人、外で時間を過ごす生活をしている。

 

なぜその時間家にいてはいけないのか、

両親ははっきり言わないけれど

いつきくんはなんとなく気づいている。

 

朝家に帰ると、

誰かが来ていた形跡があること

へんなにおいが漂っていること

そして押し入れには植物が隠されて栽培されていることー

 

・・・

 

ふらふらと不安定で壊れかけた大人と、

傷ついていることを隠して強がるように振る舞う子ども。

真夜中に少しずつ、2人は言葉を交わしていくー

 

 

◆「しずけさ」感想・ネタバレ一部含む

 

この余韻にまどろんでいたい。

のーんと延びて消えてゆく、影。(p.114)

序盤のこの表現で、私はこの作品がとても好きになると思った。

 

さて、私は町屋さんの作品は初めて読んだわけですが

その文体、表現の儚さ、幼さ、頼りなさ、清さ、まぼろし感に

すぐさま魅了されたのでした。

 

いつきくんは棟方君に対して、小学生男児らしい生意気な口をききます。

しかし口と態度は強がれど、

いつきくんは傷ついているし怯えているしふつうの日々に憧れています。

 

そんな彼が棟方くんという大人に出会うけれど、

棟方君はいつきくんの中にある感情に気が付いて理解して

手を差し伸べるほどの強さも頼りがいも、まだありませんでした。

 

いつきくんから見た棟方君は年齢的には大人だけれど

棟方君は現実というものからどこか浮いたところにいて

社会を歩いている大人とは違います。

そんな棟方君の造形も

大人でいることを破綻してしまった後ろめたさや情けなさ

一方で解放感や彼の世界にある甘やかさも伝わります。

棟方君を見ているとこちらが傷ついてしまいそうになるくらいに。

 

そんな2人が徐々になんとなく近づいて

 

ほんのわずか

この先にもどこかに拠り所があるのかもしれない、くらいの希望が

見えてくる。

 

ラストは2人の状態が万事解決とはいかないけれど、

しずかにたしかな予感がある。

かれらの幸福を願いながら本を閉じる。

 

 

なんか本当にどうしようもないほどに良かった小説。

 

文學界2019年5月号

文學界2019年5月号

 

 

 ・・・

他、芥川賞関連の過去記事はこちら

 

www.mitsukaruko.net

 

www.mitsukaruko.net

 

 

www.mitsukaruko.net

 

 

川上未映子「夏物語」あらすじ・感想(一部ネタバレ含)『文學界3月・4月号』より

川上未映子さんの「夏物語」について。

雑誌『文學界』の2019年3月号から4月号で発表された作品です。

前篇・後篇合わせて1000枚の長編、これがまた面白いのでした。

 

川上未映子さんは『乳と卵』で芥川賞を受賞された美人作家です。 

乳と卵 (文春文庫)

乳と卵 (文春文庫)

 

 

川上未映子「夏物語」あらすじ【貧乏/母娘/豊胸】

第一部 2008年

夏子は30歳、アルバイトで月十数万円を稼ぎ暮らしている。

20歳の頃に作家を目指して大阪から上京し、今も小説を書いている。

 

夏子のもとへ大阪から

姉が娘(夏子の姪)を連れて遊びに来ることから物語が始まる。

姉の巻子は39歳、巻子の娘・緑子は11歳だ。

 

巻子はシングルマザーで、大阪で緑子と2人きりで暮らしている。

しかし、もう半年間、この母娘は口をきいていない。

緑子があるとき急に巻子と口をきかなかくなったのだ。

小学校では普通に過ごしているが、家では一切声を発しなくなった。

その理由は分からずに、今は筆談でやりとりをしている。

 

そんな状態だが巻子が東京にやってきたのは

東京で豊胸手術を受けるためだ。

豊胸手術に向け、クリニックのカウンセリングを受けに来たのだ。

 

夏子もアルバイト生活でお金がないが、

巻子も決してお金があるわけではない。

スナックでホステスをしているが、緑子を育てるのに金銭的にぎりぎりだ。

 

そんな巻子が150万をかけてまでなぜ豊胸手術にこだわるのか。

夏子は姉が150万かけて豊胸手術をすることを理解できないが、

否定するわけにも、止めることもできないでいた。

そしてついにカウンセリングの日がやってくるー。

 

第二部 2016年~

夏子は38歳になった。

数年前に文学賞を受賞し、小説家デビューを果たした。

その後、ヒット作が生まれたことで

贅沢な暮らしはできないが、以前のような貧乏生活ではなくなっていた。

 

そして38歳の今も夏子は独身だ。

かつての恋人は結婚し、子供も生まれ、もう小学生になる。

夏子は自分が今後子供を産むことがあるのかを考えるようになる。

そんな時、精子提供(AID)の特集番組を偶然見る。

次第に夏子はAIDを受け、出産をしようと考え始める。

AIDについて情報収集をするうちに、

AIDによって生まれてきた男性・逢沢と知り合うことになるー

 

川上未映子「夏物語」感想【生むことは暴力か、祝福か】

前篇は緑子の母親に対する感情の動きが苦しくあたたかい。

 

母親のことが大切で、好きなんだけれど

母親の行動すべてを受け入れることはできない。

好きだけど喧嘩をしてしまう。

母親の仕事のこと、お金のこと、ひどいことを言ってしまう。

もう喧嘩をして母親を傷つけたくないから口をきくことをやめた。

豊胸手術のことも意味が分からないし

本当は言いたいことも聞きたいこともたくさんあるし、優しくしたい。

 

そんな緑子の混乱の中で綴る文章は苦しく痛く強く生きている。

 

最後はお母さん、怒ってるけど泣きそうな顔で、しゃあないやろ、食べていかなあかんねんから、って大きな声で言ったから、そんなん私を生んだ自分の責任やろってゆうてもうたんやった。でもそのあと、わたしは気づいたことがあって、お母さんが生まれてきたんは、おかあさんの責任じゃないってこと。

わたしは大人になってもぜったいに、ぜったいに子どもなんか生まへんと心に決めてあるから、でも、謝ろうと何回も、思った。(p.57)

 

前篇で緑子は生むことの身勝手さを吐き出した。

・・・

後篇では夏子のAIDによる妊娠を考える場面でまた叩きつけられる。

 

AIDによって生まれてきた善百合子は自分の生を呪っている。

生まれてきたことを後悔していて、生むことを強く否定する。

AIDでなくても、パートナーとの間の子どもの出産でも

人間が人間を生むことは罪深いのではないかと投げかける。

誰もが生まれたいと思って生まれてきたわけじゃない、と。

 

後篇は読んでいて辛くなる部分も多い。

生まれてきたことが間違いで

子どもを生むことは残酷だと語る善の

その痛みに飲み込まれてしまう。

 

善が言うようにみんな賭けをしているのかもしれない。

どこにも正しい親なんていないかもしれない。

 

ただそれでも

あの時生まれてきたことを嘆いた緑子は今幸せで、それは事実。

だからこのまばゆさを信じて繰り返してしまうのかー

 

そして印象的だったセリフがひとつ。

夏子がAIDを考えていると友人の作家・遊佐に打ち明けた場面。

シングルマザーで逞しく子どもを育てる遊佐は、夏子に言う。

「子どもを作るのに男の性欲にかかわる必要なんかない」(p.81)

母親が、産んで一緒に子どもと生きていく覚悟があればいいと。

 

今はもうそんな時代になんだと、広い。

 

本当に、どんどん技術や環境が整って

一人で自由意志で子どもを生める時代になったら

出生率はどうなっていくのか。

 

文學界 2019年 03 月号 [雑誌]

文學界 2019年 03 月号 [雑誌]

 
文學界2019年4月号

文學界2019年4月号

 

 

朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』あらすじ・感想(ネタバレ含)

朝井リョウの新刊は長編『死にがいを求めて生きているの』


朝井リョウさんの新刊が発売されました。

 

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

 

 

およそ2年7か月ぶりの新刊ということでした。

朝井リョウさんといえば『桐島、部活やめるってよ』でデビュー、
『何者』で直木賞受賞された若手の作家さんです。

 

数年前はオールナイトニッポンのパーソナリティをしていて
当時はよく聞いていました。
若いのに喋りもやたらしっかりした面白い作家さん。

 

そしてこの新刊もおすすめです。

 

◆『死にがいを求めて生きているの』あらすじ

看護師の有里子の勤務する病院には

植物状態の大学生、南水智也が入院している。

その智也の見舞いに頻繁に訪れる青年・堀北雄介は智也の親友だという。

雄介は智也を助けることができなかったと後悔し、

「目を覚ますときに立ち会いたい」と献身的に病院へ通っている。

 

智也と雄介の間にはいったい何があったのか?

 

物語は過去に遡り、2人を見てきた第三者の視点から語られていく。

 

性格も真逆のような2人だが、不思議と2人は一緒にいた。

活発で勝負事が大好きな雄介と、冷静で穏やかな智也。

 

無邪気に遊んでいた小学生時代から始まり

2人は中学生、高校生、そして大学生へと成長していく。

 

 

ーーーーーー

 

 

大学生になった雄介は昔と変わらず血気盛んで活動的だ。

北大に進学した彼はジンパ復活運動のリーダーとして活動している。

 

ただ、そんな雄介への第三者の評価は変わっていた。

かつてのような人気者ではなくなっていて

口だけの痛い奴、そんな風に見られていた。

あいつの活動もさ、ズバ抜けて薄っぺらいじゃん。(ー中略ー)あいつはただなんか活動している人間だって周りから思われることが目的なだけ(p.248)

薄っぺらい、バカ、ガキ、虚言、気持ち悪い、

そんな言葉で雄介は 評されていく。

 

それでも雄介は「戦いの中にいる自分」を続けるしかない。

生きがいがあるということを、自分でも、他人からも思われるように。

ジンパ復活の活動を終えた雄介は次の生きがい・居場所を求めていく。

 

危うい場所へ向かう雄介を止めようとする智也。

ただ、智也の中にあるのも純粋な友情だけではなくー…

 

 

 

◆『死にがいを求めて生きているの』感想(一部ネタバレ含)

つらつらとかきます。

 

初めに抱いた雄介の印象はどうだっただろう。

親友の見舞いに足しげく通う、優しさや清さを纏った青年だった。

 

小学生時代の雄介の印象はどうだっただろう。

やんちゃで元気で素直な、子供らしい、子供。

 

中学生、高校生へと成長していくにつれて

どこか少しずつひっかかる。

 

そして大学生になった雄介は

かつてのような人気者ではなくなった。

彼を見る周りの目は成長しているのに

雄介自身は子供の頃から変わっていない。

 

痛い大学生。

雄介の過去を知っている側としては

何を間違って、こんな風になってしまったんだと思ってしまう。

彼が嘲笑われる様にちくちくと傷つく。

 

何かをしている自分でいたい、という感情を私も知っている。

だから雄介の肩を持ちたくなる。というか

雄介を許すことで自分も許されたいという狡さかもしれない。

 

雄介が智也の見舞いに通うのは

看護師の有里子が想像しているようなきれいな理由ではなかった。

 

雄介が「親友の看病」を次の生きがいに選んだから。

智也が植物状態になった原因は、雄介が故意ではないにしろ突き飛ばしたせい。

それを隠すために、足しげく見舞いに通い

智也の目を覚ます際に立ち会おうとしている。

 

他人から見たら気が付かないところにある思惑。闇。

裏切りってどこにあるのか。 

暴くことは正義なのか攻撃なのか意地の悪さなのかも

よくわからなくなる。 

 

 -----

さて、今回の『死にがいを求めて生きているの』は

下記リンクを貼りました「螺旋プロジェクト」の一作品とのこと。

海族と山族の2つの種族の対立が描かれています。

私は他の作品はまだ読んでいませんが、面白そうです。

www.chuko.co.jp

 

ーーーーーー

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

 

 

 

「女による女のためのR-18文学賞」第18回最終選考候補作は3月14日まで公開!

お久しぶりです。

2月はまるでブログの更新をしませんでした。

私生活の方がひと段落したので今月はさくさくブログを更新していきます!

 

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さて、今日は「女による女のためのR-18文学賞の話です。

この文学賞

最終選考に残った作品がネットで公開されていて、

第18回の作品が読めるのがちょうど今なのです。

そして3月14日まで公開予定、となっているので

ぜひ今読めるうちに紹介をしたいと思います。

www.shinchosha.co.jp

◆「女による女のためのR-18文学賞」は今はR18ではない

この文学賞、応募者は女性に限定されています。

そして「R18」と文学賞の名前にはついているように、

かつては性をテーマにした作品の賞でした。

 

しかし、第11回からはそれがリニューアルされて、

性をテーマとするものに限定をしない、ということになりました。

公式サイトでは下記のように宣言されています。

 

これまでR-18文学賞は「女性が書く、性をテーマにした小説」を広く募集してきました。賞が設立された10年前、小説に描かれる官能は主に男性のためのもので、女性が性を書くことはタブーとはされないまでも、大変な勇気のいることだったと思います。
 しかしいまでは、女性が性について書くことは珍しいことではなくなり、多くのすばらしい書き手が生まれています(その中にR-18文学賞でデビューされた方がたくさんいらっしゃることがとてもうれしいです)。このことから、性をテーマにすえた新人賞としては、一定の社会的役割を果たしたのではないかと考えています。

 第11回からは、募集作品を「女性ならではの感性を生かした小説」と定めたいと思います。

女による女のためのR-18文学賞

 

 

ということで、今ではわりかしなんでもありな雰囲気です。

R18というネーミングが一般の方が手に取る際に

吉と出るのか凶と出るのかは非常に微妙に思えますが、

私は過去の作品を読んできて面白い作品があったのでおすすめしたいです。

 

 

◆過去の受賞者には宮木あや子さんや窪美澄さん

過去の受賞作も公式サイトに載っていますが

宮木あや子さん、山内マリコさん、窪美澄さん、綾瀬まるさん、

など今活躍されている方がいらっしゃいます。

 

私がそもそもこの賞を知ったのは宮木あや子さんからでした。

宮木あや子さんは『花宵道中』でこの賞を受賞しデビューしています。

ちなみに

石原さとみ主演のドラマ『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』の原作も

宮木あや子さんなのです。

(ドラマの衣装が可愛くて大好きでした。)

 

つまり今や人気作家なわけですが

私の宮木さんのおすすめは

『婚外恋愛に似たもの』です。

婚外恋愛に似たもの (光文社文庫)

婚外恋愛に似たもの (光文社文庫)

 

婚外恋愛に似たもの。

どういうもの?とはてなが浮かぶタイトルなわけですが

この表紙をよく見てください。

女性が持っているもの、それはうちわです。

どこかでこんなうちわを持っている女性を見たことがあるような…。

これは5人の女性のお話ですが

彼女たちは既婚者で、35歳、そして男性アイドルの熱狂的なファン。

この設定だけで興味がわいてしまいませんか。

 

話はそれましたが、私は宮木さんきっかけで

過去の受賞者の作品を読むようになりました。

窪美澄さんも今や大好きな作家です。

 

◆第18回の最終候補作が読めるのは3月14日まで!コメントで決まる読者賞もあるよ!

最終候補作の6作品はこちらです。

公式サイトで今なら読めます。

 

木村咲「キリコ」

宮島ムー「好きだった人」

月吹友香「赤い星々は沈まない」

小沼朗葉「おまじない」

善知鳥二子「トーキングヘッズ」

千加野あい「どうしようもなくさみしい夜に」

www.shinchosha.co.jp

 

いずれも400字詰め原稿用紙30~50枚の規定なので

1作品15分もあれば読めます。 

そして読者のコメントで決まる読者賞もあります。

  

私は

千加野あいさんの「どうしようもなくさみしい夜に」

小沼朗葉さんの「おまじない」

この2作品が好きでした…!

特に「どうしようもなくさみしい夜に」は受賞本命と予想しています。

 

他の作品もなんとも瑞々しく

作家の誕生に立ち会えている心地でわくわくします。

残り期間も短いですがどうぞおすすめです。

Excel基本のショートカットキー知らないと損!【大学生で覚えたいエクセル】

初心者向けのショートカットキーを紹介します。

ショートカットキーを使うことで、マウスなどを使わないで速く操作できます。

キーボードの操作のみでことが進むので

いちいちマウスに持ち替える手間がなくなります。

コンピュータの特定の機能を動作させるために押すキーである。

多くの場合、マウスなどのポインティングデバイスを使用した操作でも同様の機能が使用できるが、「ショートカット」という語が示す通り、(ある程度PCの操作に慣れている場合)一般的な操作を迅速に実行できる。(ショートカットキー - Wikipedia)

 

 

◆エクセルは独学でなんとなく覚えた程度の方へ

表計算ソフトのExcelは皆さん普段使っているでしょうか。

 

私はとExcelの出会いは大学1年生の時。

授業で簡単な関数を教わったくらいでした。

 

その後も特に自分で勉強することもなく過ごし

社会人になってからも

大学1年生の時に得た知識のみでやり過ごしてきました。

 

仕事では会議資料を作る際に使うくらいでした。

 

足し算、引き算、掛け算、割り算、平均値などの計算。

棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフを作るくらい。

 

過去に得た知識でやり過ごせていたので勉強する気も起きなかったし

分かっていると思い込んでいました。

 

◆藤井直弥、大山啓介『Excel最強の教科書[完全版]』を読む

さて、そんな私ですが仕事を辞めることにして時間ができました。

本屋をうろうろする時間が増えたわけですが

平積みされていたExcel最強の教科書[完全版]』を手に取りました。

 

 

これからどんな仕事をするか分からないけれど

まぁ暇だし勉強してみようかな、と思い購入してみました。

そして読んでみると知らないことだらけで

知らずに損していたことばかりでした。

 

半信半疑になりながらExcelで本に書かれていることを

試してみたところ、

え?こんなことできるの?

とショックを受けました。

絶対参照にするとき今まで$をいちいち打っていたけど

F4で簡単に変えられる、なんてことも初めて知りました。

 

 

◆まず覚えるべき基本のショートカットキーはこれ!

きっと事務職の人や日常的にExcelを使う人からしたら常識なんですが

なんとなく独学で覚えた人や学生の時にさらっと勉強した程度の人には

案外知らないことなのです。

 

私が実際これだけでも覚えたら便利!

と思ったショートカットキーを紹介します。

(Ctrl +~ は同時押し)

Ctrl + C  コピー

Ctrl + X  切り取り

Ctrl + V  貼り付け

Ctrl ₊ Z  1つ前の状態に戻す

Ctrl + F   検索

Ctrl + A   全選択

Ctrl + S  保存

F12     名前をつけて保存

F4     直前の操作やコマンドの繰り返し(色塗り、罫線など)

       数式を入れる際セルの参照形式の変更(絶対参照→複合参照→相対参照)

Shift + space  行全体を選択

Ctrl + space  列全体を選択

Ctrl + + セル/行/列の挿入

Ctrl + PgDn 右側のシートへ移動

Ctrl + PgUp 左側のシートへ移動

Ctrl + Tab 別のブックへ切り替える  

◆大学生のうちに知りたかった…まだまだあるショートカットキー

ただいま挙げたのは基本中の基本でした。

他にもあらゆるショートカットキーがありました。

ゲーム感覚で覚えるのも楽しいです。

 

それにしてももっと早く知っていれば良かった、と思うことばかりです。

大学の入学祝いにあげたいような本でした。

おすすめです。