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朝井リョウ『死にがいを求めて生きているの』あらすじ・感想(ネタバレ含)

朝井リョウの新刊は長編『死にがいを求めて生きているの』


朝井リョウさんの新刊が発売されました。

 

死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

 

 

およそ2年7か月ぶりの新刊ということでした。

朝井リョウさんといえば『桐島、部活やめるってよ』でデビュー、
『何者』で直木賞受賞された若手の作家さんです。

 

数年前はオールナイトニッポンのパーソナリティをしていて
当時はよく聞いていました。
若いのに喋りもやたらしっかりした面白い作家さん。

 

そしてこの新刊もおすすめです。

 

◆『死にがいを求めて生きているの』あらすじ

看護師の有里子の勤務する病院には

植物状態の大学生、南水智也が入院している。

その智也の見舞いに頻繁に訪れる青年・堀北雄介は智也の親友だという。

雄介は智也を助けることができなかったと後悔し、

「目を覚ますときに立ち会いたい」と献身的に病院へ通っている。

 

智也と雄介の間にはいったい何があったのか?

 

物語は過去に遡り、2人を見てきた第三者の視点から語られていく。

 

性格も真逆のような2人だが、不思議と2人は一緒にいた。

活発で勝負事が大好きな雄介と、冷静で穏やかな智也。

 

無邪気に遊んでいた小学生時代から始まり

2人は中学生、高校生、そして大学生へと成長していく。

 

 

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大学生になった雄介は昔と変わらず血気盛んで活動的だ。

北大に進学した彼はジンパ復活運動のリーダーとして活動している。

 

ただ、そんな雄介への第三者の評価は変わっていた。

かつてのような人気者ではなくなっていて

口だけの痛い奴、そんな風に見られていた。

あいつの活動もさ、ズバ抜けて薄っぺらいじゃん。(ー中略ー)あいつはただなんか活動している人間だって周りから思われることが目的なだけ(p.248)

薄っぺらい、バカ、ガキ、虚言、気持ち悪い、

そんな言葉で雄介は 評されていく。

 

それでも雄介は「戦いの中にいる自分」を続けるしかない。

生きがいがあるということを、自分でも、他人からも思われるように。

ジンパ復活の活動を終えた雄介は次の生きがい・居場所を求めていく。

 

危うい場所へ向かう雄介を止めようとする智也。

ただ、智也の中にあるのも純粋な友情だけではなくー…

 

 

 

◆『死にがいを求めて生きているの』感想(一部ネタバレ含)

つらつらとかきます。

 

初めに抱いた雄介の印象はどうだっただろう。

親友の見舞いに足しげく通う、優しさや清さを纏った青年だった。

 

小学生時代の雄介の印象はどうだっただろう。

やんちゃで元気で素直な、子供らしい、子供。

 

中学生、高校生へと成長していくにつれて

どこか少しずつひっかかる。

 

そして大学生になった雄介は

かつてのような人気者ではなくなった。

彼を見る周りの目は成長しているのに

雄介自身は子供の頃から変わっていない。

 

痛い大学生。

雄介の過去を知っている側としては

何を間違って、こんな風になってしまったんだと思ってしまう。

彼が嘲笑われる様にちくちくと傷つく。

 

何かをしている自分でいたい、という感情を私も知っている。

だから雄介の肩を持ちたくなる。というか

雄介を許すことで自分も許されたいという狡さかもしれない。

 

雄介が智也の見舞いに通うのは

看護師の有里子が想像しているようなきれいな理由ではなかった。

 

雄介が「親友の看病」を次の生きがいに選んだから。

智也が植物状態になった原因は、雄介が故意ではないにしろ突き飛ばしたせい。

それを隠すために、足しげく見舞いに通い

智也の目を覚ます際に立ち会おうとしている。

 

他人から見たら気が付かないところにある思惑。闇。

裏切りってどこにあるのか。 

暴くことは正義なのか攻撃なのか意地の悪さなのかも

よくわからなくなる。 

 

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さて、今回の『死にがいを求めて生きているの』は

下記リンクを貼りました「螺旋プロジェクト」の一作品とのこと。

海族と山族の2つの種族の対立が描かれています。

私は他の作品はまだ読んでいませんが、面白そうです。

www.chuko.co.jp

 

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死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの