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上田岳弘『ニムロッド』あらすじ・感想(ネタバレ含)【第160回芥川賞受賞】

◆第160回芥川賞受賞作品は上田岳弘『ニムロッド』、町屋良平『1R1分34秒』

先日

第160回、平成最後の芥川賞受賞作品が発表されました。

上田岳弘さんの『ニムロッド』

町屋良平さんの『1R1分34秒』

の2作品が選ばれました。ぱちぱち。

 

第160回芥川賞受賞 ニムロッド

第160回芥川賞受賞 ニムロッド

 

  

第160回芥川賞受賞 1R1分34秒

第160回芥川賞受賞 1R1分34秒

 

 

 今回は上田岳弘さんの『ニムロッド』についてもろもろ書きます。

 

上田岳弘(うえだ たかひろ)さんとは、

・岳弘と書いて「たかひろ」と読む。(今までたけひろだと思っていました。)

・1979年生まれの39歳

早稲田大学卒業

・『私の恋人』で第28回三島由紀夫賞を受賞

(2016年のアメトーーク!の読書芸人の回で又吉さんに紹介本)

・IT企業の役員と作家の2足の草鞋を履く。兼業作家。

 

 

◆『ニムロッド』あらすじ(一部ネタバレ含む)

 

主人公中本は東京のIT企業で働くサラリーマン。

この度新設される仮想通貨採掘課でただ1人

ビットコインの採掘を任されることになる。

 

・・・

 

中本には恋人・田久保紀子がいる。

紀子は外資系証券会社で働くキャリアウーマン。

完璧に思える彼女だが、彼女には忘れることのできないトラウマがあった。

 

紀子は離婚歴がある。

彼女は結婚をしていた時、一度妊娠をした。

出産年齢的に若くはなかったので、出生前診断を受けることにした。

しかし、そこで胎児の染色体異常がわかる。

 

産むか産まないかの判断を、夫は紀子に委ねた。

紀子は悩みぬいて、産まない決断をした。

夫は紀子を支える姿勢を示してはいたが

彼女一人に委ねず、一緒に背負い考えるべきことだった。

このことがきっかけとなり、2人は離婚した。

 

彼女は、もう人類の営みにはのれない、と言った。

 

・・・ 

 

中本のもとには時折「ニムロッド」という人物から

メールが送られてきていた。

送られてくるメールは「駄目な飛行機コレクション」の紹介。

こんな謎のメールを送り付けてくるニムロッド。

ニムロッド、それは名古屋へ転勤した中本の先輩・荷室だ。

 荷室はうつ病により休職、のちに実家のある名古屋で復職をした。

仲の良かった中本は今でも荷室と連絡を取り合っている。

 

荷室がうつ病になった原因は

小説家志望の彼が新人賞の最終候補となるも

落選したことが大きいのではないか、と中本は推測している。

それでも荷室は時折小説を書いては

中本へメールで送ってくる。

 

そんな荷室から送られてくる不思議なメールに

紀子は興味をもつようになるー

 

ビットコインをまるで知らない人の『ニムロッド』の感想

 

まず、私はビットコインがあれほどニュースになっていたにも関わらず、

まるで知識がありませんでした。

 

なんだかすごくお金を稼いだ人がいるらしいぞ。

世間を騒がせていた話題のはずなのに

理解する気持ちが湧かないくらいには

私にとっては夢みたいな話で、別世界のお金でした。

 (ナカモトサトシさんのことも知らなかったので、

この設定も架空の話なのかと思っていたレベルです。)

 

買った日にすぐに読みました。

でも、感想を書くのに怖気づいてしまったのです。

それはビットコインの知識がないからとかではなく、

どこまで受け止められたのか、とても自信がなかったからでした。

 

哲学的という言葉は大変都合が良いのですが

そもそも私は哲学のこともよく分からないので

そんな言葉でまとめるわけにもいかず

数日間もやもやしていました。

しかしながら今感じているこのもやっとしたものを

とりあえず忘れないように書いてみます。

 

・・・

 

 

ビットコインの採掘を半端な形で終えてしまう中本。

過去のトラウマを抱えている紀子。

リハビリのように静かに小説を書き続ける荷室。

 

ラストでは紀子と荷室の自殺を仄めかす描写もありながら

連絡が取れなくなった今、中本にも我々にもそれを知る術はない。

 

何かを成し遂げることの美しさや正しさから

距離をとっていて、

無意味さや、自分の手の小ささや、容量の限界を

静かに許して、汚さないところ、貶めないところが

私はとても好きです。

 

そして荷室の書く小説に出てくる、人間の王ニムロッドは

莫大な資産を持ち、高い塔を建て、欲していた駄目な飛行機を揃えた時に

商人から問いかけられます。

 

「君の願いももう完璧に叶ったのではないか?それでも君はまだ、人間でい続けることができるのかな?」(p.106)

 

駄目で不完全で満ち足りない部分があるから人間であり

欲深くて臆病で滑稽でいることを許容されるのです。

人間に対する母性を見た気がします。

お母さんのお腹の中で見た夢のような気持ちになる不思議。

 

紀子や荷室の印象が強くて

中本さんはちょっと傍観者みたいな印象で

でもそんな中本さんだから紀子も荷室も彼のことを好んだのかな

なんて思いながら

今回はここまで。

 

第160回芥川賞受賞 ニムロッド

第160回芥川賞受賞 ニムロッド

 

 

私の恋人 (新潮文庫)

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