みつかることになる

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18年前に読んだタイトルも作者も思い出せない本を、当時借りた地元の図書館へ探しに行った

13年ぶりに地元の市立図書館に行った個人的な話。

 

◆小学生から高校生まで通った市立図書館

確か、小学生の頃に親に連れて行ってもらったのが初めてだった。

 

私の家には小説というものがなかった。

絵本はたくさん読んでもらったけれど

絵本を卒業した後に小中学生が読む本はなかった。

 

それでも小学校には図書室があった。

図書室の貸出カードが何枚目になるかを友達と競った。

貸出カードの記録を伸ばすために本を読んでいた。

こまったさん、かぎばあさん、ガンバの冒険ズッコケ三人組

伝記なんかもよく読んだっけ。

 

そんなこともあって、高学年になると

学校の図書室で自分が読みたい本はあらかた制覇していた。

 

 

そんな小学校高学年の頃、初めて行った市立図書館には

読んだことのない本がたくさんあった。

小学校の図書室にはなかった10代の向けの本や

大人の読む本がたくさんあった。 

 

荻原規子『空色勾玉』に出会い、本を読む楽しさを知る

それ以降、目新しさで市立図書館へ行くようになった。

そしてそこで1冊の本と出会い

本を読むことの面白さを知るようになった。

 

荻原規子さんの『空色勾玉』という本をそこで借りた。

誰に薦められたわけでもなく、なんとなく借りた。

厚い本で本棚で目立っていたから手に取ったんだと思う。

 

日本神話をモチーフにしたファンタジー小説

これが自分の世界が変わるほど面白かった。

想像力をフルではたらかせて読んだ。

主人公はどんな顔でどんな姿でどんな情景なんだろう、

自分の現実の生活よりも、その世界を考えていることが楽しかった。

3部作で続く『白鳥異伝』『薄紅天女』も夢中で読んだ。

 

荻原規子さんは数年前にアニメ化された

『RDG レッドデータガール』の作者。RDGも大好き。

空色勾玉 (徳間文庫)

空色勾玉 (徳間文庫)

 

 

 

 

 

森絵都『つきのふね』もこの図書館で借りた思い出の1冊

今年、森絵都さんの『みかづき』がドラマ化されているが、

森絵都さんの本もこの図書館で初めて読んだ。

児童文学の棚に置いてあった『カラフル』は

黄色の表紙が目を惹いていたのも覚えている。

 

森絵都さんの『つきのふね』も好きだった。

 

つきのふね (角川文庫)

つきのふね (角川文庫)

 

 

これは確か中学生になってから読んで共感して

中学生女子特有の世界に窮屈していた時救われた。

 

『つきのふね』は大学生の智さんというお兄さんがでてくるけど、

他にもこの図書館で中学生の女の子と

大学生のお兄さんが出てくる小説を読んだ。

 

あの本はなんていう本だったか、ずっと私は考えている。

本屋で『つきのふね』を見かけるたびに

あの本は何だったっけ、と頭をよぎる。

 

 

◆「一愚(いちぐ)」という登場人物の名前だけ覚えている

その本はタイトルも作者も覚えていなくて

でも思い出に残っている本だった。

・・・

中学生の女の子が、大学生の男の人と知り合う。

男の人とそのお祖父さんの関係が印象に残った本だった。

 

そしてその男の人の名前は「一愚(いちぐ)」って名前だった。

 

変わったその名前は彼の祖父がつけた名前で

人は誰でも愚かな部分がひとつは必要だ

という理由でつけた名前だった。

 

だけれど、一愚さん本人はそんな理由も知らずにいたし

祖父と関係がこじれていていた。

そして和解できないうちに祖父は亡くなってしまった。

一愚さんは祖父の日記を読んで

知らなかった祖父の思いを知っていく。

・・・

 

なんという小説だったんだろう。

一愚さんの名前の由来が印象的だった。

もう一度読みたい。 

 

「一愚」という名前を検索もしてみたけれどヒットしない。

もしかしてこの名前は私の記憶違いなのか。

いや、そんなことはないはずなんだけど。

 

多分その本を読んだのは18年ほど前のはずだ。

 

◆13年ぶりに地元の図書館を訪れる

ついに、昨年末に当時その本を借りた地元の図書館に行ってきた。

13年ぶりに訪れたそこは、当時はとても広く感じていたのに

今になってみると、寂れた小さな図書館だった。

あの時は大きな本屋も知らなかったから。

 

そして、一愚さんを探す。

当時自分が見ていた棚の場所は決まっていたので

本のタイトルや背表紙を一つずつ見ていって

見覚えのあるものをチェックしていった。

そう、こんな方法をとれるくらいに文学の棚は広くはなかった。

 

でも、見つからなかった。

 

 

◆18年ぶりに見つけた、梨屋アリエ『でりばりぃAge』

あの図書館で見つけられなかったけれど

諦めきれずにインターネットで探し続ける日々を送っていた。

 

Amazonを眺めたり

中学生向けの本をひたすら検索していた。

 

そしてついに、見つけた。

 

森絵都 『つきのふね』 好きな人 おすすめ】

みたいなキーワードで検索をしていて

 

森絵都ファンならきっとこれも好き」というページにたどり着く。

「森絵都ファンならきっとこれも好き!」2

もう更新の終了してしまった「森絵都ファンクラブ」というホームページ。

 

そこで、これかもしれない、というものを見つけた。

 

梨屋アリエさんの『でりばりぃAge』

第39回講談社児童文学新人賞受賞作
あの夏の、あの日、14歳のわたしは、1つの庭に飛び込んだ――。
思春期の微妙な心の揺れと成長をさわやかに描くひと夏の物語。

夏期講習を抜け出した14歳の真名子は、広い庭のある古びた家が気になって、入り込んでしまう。そこでは青年がひとり静かな時間を過ごしていた。彼と話していくうちに、真名子の悩みが少しずつ明らかになる。友情、家族、進路、誰もが共感する、思春期の苦悩を瑞々しい筆致で描いた講談社児童文学新人賞受賞作。

https://www.amazon.co.jp/でりばりぃAge-講談社文庫-梨屋-アリエ/dp/4062753774

でりばりぃAge (講談社文庫)

でりばりぃAge (講談社文庫)

 

 

きっとこれだ。 

 

なんとKindle版が出ていた。

泣きそうになりながらすぐに購入し読み始める。

 

これだった。

一愚さんは、いた。

名前の由来、お祖父さんのエピソードも

私が覚えているものだった。

 

正直、思い出補正もあるかもしれないから

読むのも半分怖かったが、今読んでもやっぱり好きだった。

 

私はもう主人公の年齢も一愚さんの年齢もとっくに追い越していた。

 

中学生のときに思った高校生や大学生は凄く大人だった。

でも実際自分がその年齢になるとまるで未熟で子どもだった。

今、私も小学生の子供くらいいてもおかしくない年齢になった。

子供から見たら大人でも

実際はとても足りなくて、弱くて、怖くて、恥ずかしい。

 

『でりばりぃAge』では中学生の主人公が母親に反発する。

教育熱心の空回り気味の母親に冷ややかな目を向けている。

当時は私も主人公に共感していたけれど

今読むとそんな目を向けられる母親の気持ちを思い苦しい。

 

彼女も必死で正しくあろうとしている大人だった。

子どもの頃は分からないことがたくさんあったんだな、改めて思った。

一愚さんの名前のエピソードのように

大人だって結局は不完全なのだということを

理解して許せるし手を差し伸べられる年齢になった。

 

・・・

 その後市立図書館の蔵書を検索したが

『でりばりぃAge』は置いていなかった。

どうりで見つからないわけだ。

 

インターネットのおかげで私は思い出の本に再び出会えた。

森絵都ファンクラブのホームページを

運営して下さっていた方、

おすすめ本に『でりばりぃAge』を挙げていたさちさん、

本当に感謝しています。

ありがとうございます。

 

そしてこの1か月、懐かしい本をたくさん見つける。

昔読んだ思い出の本をブログでまとめてみようかな。