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石田千「鳥居」の感想・あらすじー文學界10月号より

◆『文學界10月号』より、石田千「鳥居」

以前も紹介していますが『文學界10月号』が良かったです。

坂上秋成さんの「私のたしかな娘」は良い。

何かしら賞をとるやもと思います。

www.mitsukaruko.net

 

あと、平野啓一郎さんの特集も。

『ある男』も発売となりましたので、併せて読んでほしいです。

www.mitsukaruko.net

 

 

で、11月号を読む前にもう1つ書きたい感想がありました。

 石田千「鳥居」

石田千さんは1968年生まれ。過去に3回芥川賞候補となっています。

 第145回に「あめりかむら」

 第146回に「きなりの雲」

 第154回に「家へ」

 

近いうちに受賞もあるかもしれないので要チェックの作家さんです。

 

しかしながら私は今まで読んだことがなかったので

今回初めて石田千さんの作品に触れました。

そこで色々書きたいことがあるので書かせてください。

 

文學界2018年10月号

文學界2018年10月号

 

 

 

 

◆「鳥居」のざっくりしたあらすじ

未知子という50代手前と思しき女が、恋人の雲雄と一泊旅行に行く話。

行く先は三崎、港町。夏祭りがある。

 

電車に乗って、三崎へ行く。

他愛のない会話。

三崎での観光、宿、温泉、食事。

ただその日その場所は祭りによって、特別に浮かび上がる。

 

祭りは生命力に満ちている。

 

三崎の鮮やかな祭りの中で未知子は思い出すーーー

 

40歳の頃妊娠をしたことを。

結婚はしていない。

未知子は悩み、一人、中絶を決めた。

 

しかし中絶をする前に、自然流産をしたことをーー

 

 

ーーーーーーーーー 

あらすじ!と言って書くような感じではなかったです…。

 

ストーリーが展開していく!というよりも

未知子の見ている情景と内省によって読ませるもの。 

 

  

◆感想ーあざとくて物欲しげで気持ち悪くて、懐かしい

 

私は初めて石田千さんの作品を読みましたが

 今回読んで「好き嫌い別れるだろうな~」と思いました。

内容よりも文体で受け付けない人はやめてしまうかも。

 

・台詞に「 」がなく人の言葉も地の文も同じように書かれている。

・ひらがなと漢字が入り混じる独特の表現。

・句読点の多用

・あざとく物欲しげでちょっと気持ち悪い語り

 

「読みにくっ」

というのが最初の感想でした。

 

 うーん。

語りの甘ったれた物欲しげであざとい雰囲気が拭えなくて

年齢設定との違和感が。

私語り手は20歳くらいのサブカル女子かと思いました。

むず痒い違和感を抱きながらも読みすすめます。

 

しかしながらこれに耐えつつ読んでいくと慣れてきて

この詩的なリズムに揺られていくのも悪くないかもしれない

という気分になる。 

 

そしてむず痒さの中で見る祭りの鮮やかさ。

 

いつかの記憶の中にある祭りの

鳴り響く声、湿度、匂いを思い出させて懐かしさにも出会う。

 

この文体によって

祭りのもつ暴力的な部分や、性的な部分、生命力を

濃く際立たせているように感じた。

 

1度読んでみて

2回目も読もうと思うし

3回目も読んでみようと思う作品。

 

最近あまり読んだことのなかったタイプ。

結局のところおすすめしてしまう。

 

きなりの雲 (講談社文庫)

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家へ

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