みつかることになる

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小説『侍女の物語』ラストネタバレ有【ディストピア】

マーガレット・アトウッド侍女の物語

Huluで配信中の海外ドラマ「ハンドメイズ・テイル/侍女の物語」をご存じですか?
私も最近見始めたけれどあまりの鬱展開に心を痛めながらも続きが気になる。

気になりすぎて

その原作マーガレット・アトウッド侍女の物語

を読むことにしました。

 

1985年に発表されたこの小説はいわゆるディストピア小説

(理想郷を意味するユートピアと反対の意味で使われるのがディストピア

ディストピア小説と言うと

ジョージ・オーウェルの『1984年』

オルダス・ハクスリーの『すばらしい新世界』らが有名でしょうか。

 

そしてこの『侍女の物語』は

女性の自由と尊厳が奪われた管理社会を鬱々と描いている小説です。

 

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

 

 

 

 

旧約聖書『創世記』第30章より

侍女の物語』において冒頭で、旧約聖書『創世記』より引用されています。

この部分がこの小説の種のようになっています

 ラケルヤコブとのあいだに子供ができないとわかると、姉をねたむようになり、ヤコブに向かって言った。「わたしにもぜひ子供をお与えください。与えてくださらなければ、わたしは死にます」

 するとヤコブラケルに激しく怒って言った。「わたしが神に代われると言うのか。お前の胎に子供を宿らせないのは神御自身なのだ」

 ラケルは言った。「わたしの仕え女のビルハがいます。彼女のところに入ってください。彼女が子供を産み、わたしがその子を膝の上に迎えれば、彼女によってわたしも子供を持つことができるでしょう。

(『創世紀』第30章より)

 

 

ざっくり言い直すとこんなことが書いてあります。

 

ラケルヤコブの妻。

レアはラケルの姉であり、ヤコブの妻です。

ラケルは自分には子供ができていないのに

レアとヤコブとの間に子供ができたことに嫉妬をして、

ビルハという女にヤコブとの子供を産ませ、自分の子としました。

 

ただ、これは一部の引用でその前後にも物語はあり、

ヤコブはレアよりもラケルを愛していた…

そのあとレアも自分の侍女にヤコブとの子を産ませた…

最後にはラケルヤコブとの子を産んだ…とか

複雑に展開していくので一度『創世記』を読んでみると

また違った印象を持つかもしれませんね。

 

 

◆あらすじ

・「侍女」子供を産ませるための道具

アメリカでキリスト教原理主義者がクーデターを起こし

ギレアデ共和国を建国した。

 

当時環境汚染や性病によって出生率は著しく低下していた。

子供を産ませるために

政府は女性から仕事と財産、自由と尊厳を取り上げ、管理を始めた。

 

主人公であるオブフレッドもまたその犠牲者だった。

娘を取り上げられ、夫も娘も消息不明。

出産経験のあるオブフレッドは

出産可能な女「侍女」として子供を産むための存在となった。

反抗した者は「不完全女性」としてコロニーと呼ばれる施設で、

汚染物質の清掃などを強制され病気になって死んでいった。

 

「司令官」と呼ばれる地位の高い男の元に派遣され

彼の子供を産むために生かされている。

オブフレッドという名前も、本当の名前を取り上げられ

後からつけられたものだった。

Offredは of fred 【フレッドの所有物】という意味だ。

侍女たちはオブグレン、オブウォーレンと、仕える男の名前にofをつけられた。

 

オブフレッドは侍女として司令官フレッド・ウォータフォードに仕えることになる。

侍女として、「儀式」を行う。

 

「儀式」※先に引用した『旧約聖書』を思い出しましょう。

司令官の妻・セリーナは両脚を開きベッドに仰向けで寝る。

侍女はその足の間に入り、仰向けで、頭はセリーナの腹に乗せる形で寝た。

妻と侍女が一体になったような体制を取り

司令官は侍女に挿入する。

これは侍女を孕ませるための儀式であり、仕事だ。

 

この儀式は繰り返されるがそこに侍女と司令官の愛はない。

司令官は妻との間に子供設けられないので

侍女との間に子供を作り、それを夫婦の子とするのだ。

 

・オブフレッドと司令官の密会

司令官と侍女の間に特別な感情や行為をもつことは禁じられている。

わたしたちは二本の脚を持った子宮にすぎない。(p.252)

オブフレッドもそれを固く守らなければいけないと考えている。

だが、ある夜オブレッドは司令官から一人で書斎にくるように誘われる…

 

オブフレッドは司令官の求めているものを知り

できることなら弱みを握りたいと考える。

彼女はまだ、逃亡を諦められずにいたからー

 

しかし、二人で会った夜、そこで行われたのはただのゲームだった。

ゲームの相手をしてほしい、と司令官は言った。

それ以降もまたオブフレッドは司令官の書斎を訪れた。

ゲームをし、ささやかなプレゼントを貰っていた。

2人の関係は緊張感を保ちながらも少しずつ砕け変化していくが…

 

 

ディストピアは2195年過去になる【感想・ラストネタバレ有】

オブフレッドの視点で物語が進行していきます。

その視点が現在と過去が高い頻度で切り替わるので

オブフレッドの受け入れがたい現実をより切実に感じさせます。

 まるで健全ではない不安定さや危機感とか怯えを感じさせるような作りに思います。

 

なにもかもひどくてつらい。

儀式のあとにオブフレッドの、自分とセリーナのどちらがつらいのかー

という語りがあります。

オブフレッドだけでなくセリーナもつらい

そしてきっと司令官もまた孕ませなければいけない。

まんま『旧約聖書』のようです。

 

他の侍女も女中も自由な人はいなくなり

誰もが希望を押し殺して暮らしているような世界でした。

 

そしてオブフレッドは司令官との密会を重ねていきますが

そこにキスはあれど彼女を深く傷つけるようなものはありませんでした。 

 司令官ていい人なのかもー

もしかしてオブフレッドを逃がしてくれるのかもー

そんなちいさな望みを抱いてしまいましたが

彼がオブフレッドを連れてきたのは娼館のようなところ。

しかもそこでセックスするっていう…。

株価急落。

 

そして詰めが甘すぎてセリーナに見つかるという最悪の展開。

オブフレッドは自殺をぼんやり考えだしたところで

見知らぬ男たちとニックが部屋にやってくる。

ニックは連れ出すから信じろと言うが

それを素直に信じることもできない。

騙されているかもしれない。

それでもその男たちに連れられていくしか、オブフレッドには道がなかった。

 

 

で、この物語が終わったと思いきや

最後の章「歴史的背景に関する注釈」が始まります

これがある意味で救いではあります。

 

時は流れて2195年

「『侍女の物語』に関する信憑性の問題」についての講演が始まります。

 

オブフレッドの視点で語られてきたこの物語は

過去のギレアデ政権時代の資料で

カセットに録音されたものを書き起こしたものでした。というオチ。

 

この『侍女の物語』と名付けられた歴史的資料についての

未来からの考察が語られます。

そして過去、彼女たちのいた闇は

光の中にある現在からでは正確に判読できないと結論付けられます。

 

後味悪いのに面白かったです。悔しい。

 

ドラマの方も見ていますが、ドラマはオリジナルの展開もあるので

小説を読んでも楽しめるかと思います。

 

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個人的にずしーんときた司令官のお言葉

我々は女性からいろいろなものを奪いましたが、それ以上のものを与えたんですよ、と司令官は言った。(中略)楽に男を手に入れられる娘と、なかなか 男を手に入れられない娘とのあいだに残酷な差別があったのです。それを忘れましたか?絶食して痩せたり、胸にシリコンをいっぱい注入したり、鼻を削り取ろうとしました。その人間の惨めさを考えてごらんなさい。(p.400)

 

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

侍女の物語 (ハヤカワepi文庫)

 

 

 

一九八四年[新訳版] (ハヤカワepi文庫)

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