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鷲田清一『ちぐはぐな身体ーファッションって何?』【おすすめ本】

 

小説以外のおすすめ本を紹介してみます。

 

◆捨てられない服と本

仕事を辞めることにして、断捨離というやつをしました。

私は捨てられないタイプの人間で、収集癖もあるのでモノが多いです。

だけれどブログを始めてからミニマリストという人たちを知り

思い切って自分も

本当にいるものと、そうでないものを分けることにしました。

 

自分の荷物の大半を占めているのが

服と本。

 

それぞれに思い出があったりはしますが、断腸の思いで捨てます。

着る回数の減った服は、使えそうなボタンやレースを取って捨てました。

これでなにか小物を作ることで服に許しを請う。

本も100冊手放すことにしました。

 

本の仕分けをしている中でも

これは一生捨てることがないだろうな、というものがあります。

 その内の1冊が

鷲田清一さんの『ちぐはぐな身体ーファッションって何?』という本です。

 

ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)

ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)

 

 

 

 

私が大学1年生の時に読んで感銘を受けた本です。

この本を読んで

ファッションがただ楽しいものから

自分という存在を補う、もしくは枠組みすらも作ってしまうものと知り

ずっと好きで、大切なものになりました。

 

文章は易しくてすいすい読めます。

高校生でも読めるように書いてあるとか。

 

鷲田清一『ちぐはぐな身体ーファッションって何』

著者 鷲田清一(わしだ きよかず)

1949年9月2日生まれ。

日本の哲学者。

現在は京都市立芸術大学理事長・学長。

 

以下wikipediaの引用になります。

鷲田さんの主張として

主張
「身体」を「からだ」と読む(捉える)鷲田は、「身体」は自分がどのように経験するかという視点から見たとき、「身体」は、「像(イメージ)」でしかありえないと指摘している。「身体」のなかで自分がじかに見たり触れたりして確認できるのは、手や足といったつねにその断片でしかなく、胃のような「身体」の内部はもちろんのこと、背中や後頭部さえじかに見ることはできない。そして自分の感情が露出してしまう顔もじかにみることはできない。「身体」を知覚するための情報は実に乏しく、自分の「身体」の全体像は、離れてみればこう見えるだろうという想像に頼るしかない。つまり、自分の「身体」は、「像(イメージ)」でしかありえないことになる。 https://ja.wikipedia.org/wiki/鷲田清一

 

 

この本でもこの話はされています。

そして目次はこの通り。

 -----

『ちぐはぐな身体ーファッションって何?』 目次
1 つぎはぎの身体
2 みっともない衣服
3 ふつりあいな存在
4 衣服というギプス
あとがき

ーーーーー

目次を見ただけでもわくわくしてしまいます…。

 

 

◆個人的にお気に入りの話

1、皮膚感覚の話

先に引用した主張は一章の<つぎはぎの身体>でも書かれています。

皮膚感覚について。

 

私たちは自分の身体全体を見渡すことができません。

視界に自分の身体全てが入ることって

鏡ばりの特殊な空間にでも行かない限り不可能ですよね。

 

そんな自分の身体の輪郭を知ることができるのは、どんな時か。

 

お風呂に入ったとき

シャワーを浴びているとき

日光浴をしているとき

汗をかいたとき

他者と身体を接触させたとき

 

このように,水や熱などで皮膚感覚が刺激されたときに

不確かだった自分の身体の輪郭が浮かび上がってきて

人はそこに心地よさを感じるーということが書かれています。

 

身体のおぼろげなイメージ、たよりないイメージを補強する効果をもっているのだろう。それらがひとの存在に確かな囲いを与えてくれるのだ(p.18)

 

今までそんなことを考えたこともなかったから、すごく面白かったです。

これを読んでから、シャワーを浴びること、汗が体をつたうこと、

毎日何も感じていなかった当たり前だったことが

ほんの少しきらっとしていく。

 

2、「きたない」という感覚と境界の話

じぶんの内部と外部、<わたし>と<わたしでないもの>との境界をあいまいにするもの、境目を不分明にするもの、それが「きたない」のだ。(p.27) 

 私は軽い潔癖であって、それが悩みでもありました。

ちょっとしたことを気にして心が狭いなぁと自分で思っていても

なかなか折り合いがつけられずにいました。

 

そんなときに、「きたない」という感覚についてひとつの考えを読んで

この鷲田さんの話が結構、すとんと自分の中に落ちました。

 

髪はきたないと思わないのに、それが1本抜けて落ちていたら

自分のものでなくなったとたんに「きたない」に変わるー

 

そういうことに対しての、ひとつの視点。

 

それまですぐに「きたないさわりたくない」と言っていた私も

何に対してきたないと感じているのかを考えるようになり

少し和らいで、生きやすくなった気がします。

 

 3、制服の話

制服文化について語り出したらもう私は止まらないんですが…

規律への従順さを表わす制服が、まさに従順さを凌辱するようなまなざしを呼びよせるという側面だ。(p.64)

こんなことも書かれておるのです。

制服のもつ表と裏。

<自由の制服>と<不自由の制服>についても大変興味深い話ばかりです。

 

それにしても

制服って正しさを示すものでありながらも、非情に危うく人を狂わせます…。

 

ーーーーー

こんな感じで身体やファッションについての面白い話がたくさん。

ギャルソンやヨウジヤマモトも取り上げられているので

好きな方はぜひ。

 

ちぐはぐを読んでから、鷲田清一さんの本は一通り読んできましたが

やっぱり一番読みやすくて 最初に読んだ本なのでこれが一番おすすめです。

ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)

ちぐはぐな身体―ファッションって何? (ちくま文庫)

 

 

 ちぐはぐより、ちょっと難しくなるけどこれもおすすめ。

モードの迷宮 (ちくま学芸文庫)

モードの迷宮 (ちくま学芸文庫)